大分(九重)の「おいさん」
 大分(九重)の「おいさん」
ここに掲載している体験は、1900年代終わりのことです。
初代〜2代目のTANUKIのホームページに掲載していた「TANUKIの言いたい放題」というTANUKIの思いや体験をエッセイ風に、筆の向くまま気の向くままに書き綴ったページより抜き出して再掲載しました。
 昔(1900年代の終わり頃)・・・・友人を連れて九重(ここのえ)に行った時のことです。
あちこちに、野菜とかを道ばたの簡単な屋根のある店に置いて「勝手に○○円入れて・・・・」といった無人の店がありますよね。
九重の野菜は「高原野菜」ですから、とにかくおいしいのです。白菜とか・・・・たまりませんよね。夏だったらトウモロコシですね。新鮮ですし、ここのトウモロコシを食べたら・・・・よそのは食べられなくなります!
話は脱線しますが、買ってすぐに男池(おいけ)の水でも汲んで、駐車場とかでゆがいたら・・・・あ〜、よだれが出る!

 すみません。話を戻しますね。その男池に友人を連れて行って、「やまなみ」に戻ろうと千町無田に向かっていました。
途中、道ばたで美味しそうな野菜を見つけて車を駐めました。家で待ってくれてるms.TANUKIに買って帰ったら、きっと喜んでくれるだろうと思って。
買おうと店に近づいていくと、ちょうど道の反対側の店で白菜を並べてる「
おいさん」(大分では、こう呼びます・・・・)が目に入りました。TANUKIIは、このような「おいさん」と話すのが大好きです。

 早速、そのおいさんに近づいて「白菜、売ってくれんね?」と声をかけました。
その”おいさん”いわく、「あ、こりゃあ、あんたには売れん!」「どうしてね?」「もうすぐ観光バスが来るんよ。観光客に売れて頼まれち、並べとるんよ。」「へえ、そうなん・・・・」

 ここで引き下がってはTANUKIの名前が泣きます・・・・「しかし、おいさん。さすがに立派な白菜やねえ・・・・おいしかろうねえ・・・・育てるのも大変やろうねえ・・・・イノシシとか出らんね?」・・・・すると、そのおいさん、寂しそうな笑いを浮かべて
「シシはかわいいんよ・・・・観光客やキャンプ客がねえ・・・・」「え?どうして?」「あんなあ・・・・聞いくれるか・・・・最近は不景気なんかなあ・・・・観光に来た客が畑からごっそり盗って行くんよ。」「え〜、そんなこと・・・・ホントかい?」「ああ、夜になあ。」

 TANUKIは大分弁は得意でありませんので・・・・これからの「おいさん」の話を要約すると次のようなものでした。

★ 観光客(・・・・とおいさんは言ってましたが、キャンパーかな?)が、夜こっそりと畑から野菜を盗んでいく。

★ もちろんイノシシも柵を壊して畑を荒らす。でも、彼らは自分の食べる分だけしか盗らない。

★ 人間は、必要以上に盗む。そして、食べきれなかった分や持ちきれない分、ちょっとでも痛んでいるようなものを、ここのような店の前や道路に平気で捨てていく。

★ おいさんたちにとって観光客は収入源でもあるので、みんなが来てくれるように「マユミ」の植樹をしたりした。もちろん観光客には来て欲しい。丹誠込めて育てた野菜を「おいしい」と言ってくれるなら、少々盗まれても・・・・喜んで食べて欲しい。でも、そんな気持ちも、だんだん複雑なものになってきている。

★ 最近は、イノシシの方がかわいいと思えて仕方がない。
イノシシに畑を荒らされても、昔みたいに腹が立たなくなってしまった。

うまく伝えられないのですが・・・・このような話でした。
何とも寂しくやるせない気持ちになってしまいました。

 帰ろうとすると、そのおいさん、両手に抱えきれないほどの白菜を袋に入れて
「あんた、これ、みやげじゃ・・・・あ、金はいらん!」
さすがに・・・・TANUKIも複雑な気持ちになってしまって・・・・「おいさん、私も観光客だよ・・・・」。すると、そのおいさん、ニカッと笑って
「何言っとる。あんた山屋(山好きで登山をする人)じゃろうが・・・・隠してもダメよ。あんたが黒岳の方から降りてきたのを見とったんだから・・・・昔から山屋に悪い人間はおらん!」
何か、私自身がとても恥ずかしい気持ちでした。

 表現のしようのない・・・・うれしいような悲しいような・・・・寂しいような・・・・やるせないような・・・・そんな複雑な気分で、おいさんにもらった白菜を両手に提げて、車の中に待ちぼうけを食わせた友人の方にトボトボと歩いて行きました。うしろで
「あんた、また来ちくりぃーよぉ。待っちょるけんな〜!」というおいさんの声を聞きながら・・・・。
(注) 大分弁は、TANUKIは全く自信がありません。間違っていたら、どうぞ笑って許してください!
 一番最後のおいさんの言葉は、最初に掲載した時に「おおざいうぇぶ」のyakuさんからご指摘をいただき、大分弁に修正していただきました。現在は掲示板など、ご意見を頂くページは作っていません。昔は作っていましたので、いろいろな方からご意見や感想を頂いていました。とてもありがたかったです。
その後、掲示板荒らしなどの被害がひどく、残念ながら閉鎖し現在に至っています。
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